同じ種類の猫同士でも色が微妙に違ったり、模様が全然違ったりと猫の被毛には本当にいろいろな種類があります。
そんな猫の被毛の色や模様には、両親から受け継いだ遺伝子が関係しています。
この記事では、猫の被毛の色や模様を決定する遺伝子について紹介しています。
猫の被毛の色や模様(柄)が決まる遺伝子
猫の被毛にはいろいろなパターンがあります。
どのような毛色や模様になるのかは、受け継いだ遺伝子によってある程度決まります。
色や模様に関係する基本的な遺伝子は9種類でそれぞれ優性と劣性があるため計18種類となり、親からさまざまなパターンの遺伝子を受け継ぎ仔猫の被毛が決まります。
基本的な遺伝子の他に亜種もあり、組み合わせによって被毛の濃淡や縞模様・斑点模様を決定します。
基本的な遺伝子 | 特徴 | 優性遺伝子 | 劣性遺伝子 |
アグーチ | 1本の毛に縞が入る | A | a |
ブラック | 黒 | B | b |
カラーポイント | 顔や身体の先の方に色が出る | C | c |
ダイリュート | 色が薄くなる | D | d |
インヒビター | シルバー | I | i |
オレンジ | 茶 | O | o |
スポッティング | 身体の一部が白くなる | S | s |
タビー | 縞模様 | T | t |
ホワイト | 白 | W | w |
猫の被毛の色に関係する遺伝子
いろいろな被毛の色にどのような遺伝子が関係しているのか見ていきましょう。
被毛の色 | 概要 |
ホワイト |
両親のどちらかから1つでも「W」遺伝子を受け継ぐと真っ白な被毛になります。 両親が白猫であっても遺伝子がどちらも「Ww」の場合、仔猫が「ww」遺伝子を受け継いだ時は白以外の被毛になります。 「W」遺伝子とは異なる遺伝子によって真っ白な被毛を持つ猫はアルビノと呼ばれます。 色素を持たないアルビノは、瞳孔の奥にある血管が透けて見えるため赤みがかった目を持っていることで見分けることができます。 |
ブラック |
両親のどちらかから「B」遺伝子を受け継ぐと黒い被毛になります。 「B」遺伝子は3種類あり、優先順位は「B」>「b」>「b1」になります。 ユーメラニンという色素が黒色の元となっています。 |
ブルー |
ロシアンブルーのようなブルーの毛色は「B」遺伝子に色を薄くする「dd」遺伝子が混ざっています。 色を薄くする「D」遺伝子は優性である「DD」や「Dd」の時には色の変化がなく、劣性の「dd」遺伝子の場合のみ被毛の色が薄くなる特徴があります。 |
チョコレート |
両親から黒の劣性遺伝子である「bb」または「bb1」遺伝子を受け継ぐとこの色になります。 |
ライラック |
チョコレート系の「b」遺伝子に色を薄める「dd」遺伝子が混ざった場合にライラックになります。 |
シナモン |
「b1」遺伝子が2本揃って「b1b1」という形の遺伝子の時にシナモン系の色になります。 |
フォーン |
シナモンに色を薄める「dd」遺伝子が混ざった場合にフォーンになります。 |
レッド |
「O」遺伝子を受け継ぐとレッド系の被毛色になります。 この遺伝子は性染色体のX染色体にしか存在しません。 オスの染色体は「XY」のため「O」遺伝子は1つしか持つことができなく、メスの染色体は「XX」のため「O」遺伝子を2つ持つことが出来ます。 レッド系の被毛は「OY」もしくは「OO」の時に発現します。 |
クリーム |
「O」遺伝子に色を薄くする「dd」遺伝子が混ざるとクリームになります。 |
猫の被毛の模様(柄)に関係する遺伝子
猫の被毛の模様にも遺伝子が関係しています。
被毛の柄 | 概要 |
ソリッド |
ノン・アグーチ遺伝子を持った柄の無い単色の被毛 ※上記のホワイトやブラックなど |
ティッピング |
ソリッドのような単色ではなく「I」遺伝子が関係して根元がシルバーになり、被毛の先だけに本来の毛色が入っているため一見して模様があるように見えます。 色の入り方が少ないと「チンチラ」、中間だと「シェイド」、多いと「スモーク」と三種類に分類されます。 |
トータスシェル(トーティ) |
トータスシェルとは、亀の甲羅のことです。 「O」遺伝子と「o」遺伝子が組み合わさり「Oo」遺伝子型になった時に表れます。 この組み合わせはメス猫にしか発現しません。 べっこうのような色柄で、このような被毛を持つ猫はサビ猫と呼ばれます。 |
カラーポイント |
顔・耳・四肢の先端・尻尾など身体の先端部分のみ濃い色の被毛で「C」遺伝子を持つと表れます。 代表的な猫種:サイアミーズ(シャム)・ヒマラヤン・トンキニーズ |
タビー
タビーとは縞模様のことです。
縞模様にはいろいろな種類があり、模様によって呼び名があります。
縞模様の名前 | 概要 |
ティックド・タビー(アグーチ・タビー) |
縞模様やポイントカラーなどがなく、「A」遺伝子により1本の中に複数の色が入っている被毛のため、見る角度によって色合いが違い光沢感があります。 尻尾や四肢に薄く縞模様がある場合があります。
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マックレル・タビー |
マックレルとは「鯖」のことで、全身に縞模様が入っている柄をマックレル・タビーと呼びます。 縞模様を決める優性の「T」遺伝子を持っている場合に縦縞模様が発現します。 代表的な猫種:サバトラ・キジトラ・茶トラ |
クラシック・タビー |
マックレルとは違い、不規則な斑点や渦巻状の模様が入っています。 マックレル・タビーと違うのは劣性の「tt」遺伝子を引き継いでいる点で、この場合渦巻模様が発現します。 代表的な猫種:アメリカンショートヘア |
スポテッド・タビー |
全身に縞ではなく斑点模様が入っています。 優性の「Sp」遺伝子を受け継いだ時にスポテッドになります。 |
マーブルド・タビー |
スポテッドのような斑点ではなく「ロゼット」と呼ばれる大理石の様な模様が入っています。 代表的な猫種:ベンガル |
ホワイトポイント
いろいろな模様に白色が入ったものです。
3色のものを「キャリコ」2色を「バイカラー」と呼び、バイカラーは白色の入り具合によってそれぞれ名前があります。
ホワイトスポットに関連した「S」遺伝子は被毛を部分的に白くする特徴がありますが、発現についてはさまざまでほんの一部だけの場合もあれば身体のほとんどに表れる場合もあります。
劣性である「ss」遺伝子を受け継いだ場合は白くなりません。
被毛の名前 |
概要 |
キャリコ |
黒・茶・白のいわゆる「三毛猫」です。 黒や茶の部分が縞模様だったり、色の薄い「ダイリュートキャリコ(パステル三毛)」などがあります。 遺伝子的にほとんどがメスで、オスには珍しい模様です。
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バイカラー・ミトン |
靴下猫と呼ばれる、四肢の先端や喉元、お腹にワンポイントで白が入った柄をしています。 |
バイカラー・タキシード |
顔、胸元からお腹にかけて白が入り、まるでタキシードを着ているような柄をタキシードと呼びます。 顔の八の字模様は「ハチワレ」とも呼ばれます。 |
バイカラー・マスク(マントル) |
頭、背中、尻尾にマントを羽織っているように色が入っている柄です。 |
バイカラー・キャップ |
頭、背中、尻尾に色がありますが、マスクより白の部分が多く、頭は帽子を被っているような柄です。 |
バイカラー・マグピー |
ほとんどが白でところどころに色が入った柄です。 |
バイカラー・ハーレクイン |
マグピーのように身体にはほとんど色がありませんが、頭と尻尾に色が入った柄です。 |
バイカラー・バンパターン |
身体は真っ白ですが、尻尾と耳の付け根にレッド系の柄があります。 ターキッシュバンにちなんでこの名前で呼ばれます。 |
猫の被毛の長さと毛質に関係する遺伝子
猫の被毛の長さには「L」や「H」という遺伝子が関係しています。
猫種 | 概要 |
アビシニアン |
優性遺伝子「L」は短毛を作るため、遺伝子型が「LL」や「Ll」の場合は短毛になります。 |
メインクーン |
劣性遺伝子「l」は長毛を作るため、遺伝子型が「ll」の場合はセミロング~長毛になります。 代表的な猫種:ノルウェージャンフォレストキャット・メインクーン・ラグドールなど |
ドンスコイ |
優先遺伝子「H」はヘアレス(無毛)に関係している遺伝子で、遺伝子型が「Hp」の場合はドンスコイやピーターボールドの無毛を発現します。 |
スフィンクス |
「h」は劣性遺伝子で両親から「hr」遺伝子を受け継ぐと、スフィンクスの無毛を発現します。 |
猫の被毛には、直毛だけではなくカールや縮れといった毛質もあります。
野良猫がこのような遺伝子を持っていることは滅多になく、品種固有のものであることがほとんでです。
猫種 | 概要 |
コーニッシュレックス |
劣性遺伝子「r」を持っていると発現します。 短いアンダーコートで、ビロードのような繊細な手触りのウェーブした被毛です。 |
ジャーマンレックス |
劣性遺伝子「gr」を持っていると発現します。 短毛でシルクやベルベットの様な手触りの良いカールした被毛です。 |
デボンレックス |
劣性遺伝子「re」を持っていると発現します。 短毛だけでなく、長毛の個体もありコーニッシュレックスと比較するとやや緩いウェーブをしています。 |
セルカークレックス |
優性遺伝子「Se」を持っていると発現します。 短毛種と長毛種がおり、短毛種は羊やトイプードルの様なクルクルとした被毛で、長毛種は大きくウェーブした緩くてフワッとした被毛をしています。 |
ラパーマ |
優性遺伝子「Lp」を持っていると発現します。 ダブルコートの巻毛で短毛と長毛がいます。 顎の下から肩にかけてと耳の付け根のウェーブが特に強く、尻尾や髭、睫毛まですべてカールしています。 |
兄弟でも受け継いだ遺伝子によって被毛が違う
猫にとって一緒に生まれた兄弟であっても、全く違う被毛であることは珍しくありません。
猫には月経が無く、発情期に複数のオス猫と交尾をすることで複数の妊娠が成立する「交尾排卵動物」です。
そのため、いろいろなオス猫から引き継いだ遺伝子に基づいて仔猫の被毛は変わります。
また、完全室内飼いで父猫が同じであっても、引き継いだ遺伝子の優劣によって色や柄が違ってきます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
イメージしやすいようになるべくたくさんの写真をいれてみましたが、上記以外にも色味が違ったり色の入り方が違う柄もたくさんあります。
猫は見た目がすべてではありませんが、あなたが気に入った柄であればよりいっそう愛着も沸きそうですよね。
すでに猫を飼っている方にもこれからお迎えしようと思っている方にも、少しでも参考になれば幸いです。