猫の心臓の病気の中で最も多いのが心筋症です。 初期には症状がほとんどなく、気が付いた時には病状が進行しているとても怖い病気です。 今回は、心筋症についてまとめてみました。 |
猫の心筋症の種類
心筋症は、心臓の筋肉に異常が起こり心臓の働きが低下することで全身に血液を送る働きが出来なくなる病気です。
主に下記の3種類に分類されます。
肥大型心筋症
猫の心筋症の中で一番多いのが肥大型心筋症で、心筋症のうち約60%を占めています。
心臓の左心室(または右心室)の筋肉が厚くなることで拡張不全(心臓が広がらなくなる)や流出路障害(血流の出口が塞がれる)を起こします。
拡張型心筋症
心臓の筋肉が細く伸びてしまい薄くなることで心臓が広がっていき、収縮力が低下して体に十分な血液が送り出せなくなる病気です。
拘束型心筋症
心臓内部にある繊維が厚くなり、心臓の壁が硬くなり拡張不全(心臓が広がらなくなる)を起こしたり、心内膜心筋型(心臓の中の異常な構造物)が見られたりします。
10歳以上の猫に起こりやすい病気です。
猫が心筋症になった時の症状
猫の心筋症は初期症状がほとんどなく、初期の段階では健康診断で見つかる以外気付かないことがほとんどです。
下記のような症状が見られる場合はある程度病気が進行している可能性が高いため、早急に動物病院に行きましょう。
ぐったりして元気がない
心臓の機能が低下しているため、激しい運動はしなくなり動かなくなります。
餌を食べない、食べていても痩せていく
心筋症以外の可能性もありますが、食べていても痩せる場合は何らかの病気の可能性が高いです。
心筋症だけではなく、他の病気を併発している可能性があります。
失神する
突然バタッと倒れ、何事もなかったかのように元に戻ります。
発症の頻度により治療方法が異なるため、よく観察し記録をとったうえで獣医師さんに相談することをお勧めします。
苦しそうな呼吸をする
心臓の機能が低下しているため疲れやすく、すぐに息が上がるようになります。
症状が悪化するとさらに重篤な病気を併発します。
猫は通常は鼻呼吸をしますが、呼吸困難が酷くなると口を開いて呼吸をし始めます。
舌や歯茎が真っ青や紫に変色している場合、重い酸素不足の状態です。
後ろ足が麻痺する(動脈血栓塞栓症)
心筋症によってできた血栓(血の塊)が足の血管に詰まり、足に血液が通わない状態になることで歩き方がおかしくなります。
大きな鳴き声を上げた後に後ろ足が動かなくなるのが典型的な症状です。
猫の心筋症の原因
猫の心筋症の原因は現時点では不明な点が多いです。
動物病院で受診してもはっきりとした原因はわからないことが多いようです。
遺伝子の変異
遺伝子の変異により心筋の発達に異常が出て心筋が肥大します。
メインクーンとラグドールは遺伝子の変異遺伝子を持っているのかを検査で調べることができます。
アメリカンショートヘア、スコティッシュフォールド、ノルウェージャンフォレストキャット、ブリティッシュショートヘア、ペルシャ、メインクーン、ラグドールなどで遺伝性の因子が報告されています。
肥満
メインクーンでの研究において、肥満のメインクーンの方が通常の体型のメインクーンよりも肥大型心筋症になりやすかったという報告があるようです。
また、一般的な猫に比べて骨格の大きなメインクーンはより肥大型心筋症になるリスクが高いという結果が出ているようです。
必須アミノ酸の摂取不足
拡張型心筋症の原因の一つとして、必須アミノ酸の一種であるタウリンの摂取不足がありますが、現在ではペットフードに配合されることにより発症率は減っています。
心筋の炎症
トキソプラズマなどの虫や細菌などの感染、外傷、心臓に害のある薬剤や免疫力の低下などによる心筋の炎症が関わっているのではないかと言われています。
高齢
他の病気にも言えることですが、高齢になると心臓の機能が落ちることによって発症する可能性が高くなります。
ラグドールについて
アメリカンショートヘアについて
スコティッシュフォールドについて
ノルウェージャンフォレストキャットについて
ブリティッシュショートヘアについて
ペルシャについて
猫が心筋症にならないための対策
定期的な健康診断
心筋症にならないための対策というよりは、心筋症になってしまった場合、無症状の早期に発見するには定期的な健康診断が一番です。
必須アミノ酸を摂取させる
現在では多くのペットフードに配合されているので、極端なタウリン不足になることはないですが、もしわかるようであれば両親猫に心筋症の病歴がないかを確認しておき、病歴がある場合はサプリメントなどを併用してみてもいいかもしれません。
ただし、サプリメントによって他の栄養素の摂取過剰になるのも考えものですので、かかりつけの獣医師さんに親猫の病歴を話したうえでお勧めのものを使用するのが良いかと思います。
体重の管理
心筋症になる原因の1つに肥満があります。
フード、おやつの与えすぎや運動不足に注意し体重を維持するように心がけましょう。
外傷や感染症のチェックをする
日頃からいつもと変わった様子がないかを観察したり、身体を撫でてあげたりして外傷や炎症がないかをチェックしましょう。
血圧低下のチェックをする
正確なテストではないため、一つの目安として行ってほしいのが「キャピラリテスト(毛細血管再充満時間テスト)」です。
猫の歯茎を白くなるまで指で押し、指を離した後再び赤くなる時間が2秒以上かかるかどうかで判断します。
血圧が低下していると戻りが遅くなります。
猫の心筋症の検査
心筋症と診断するにはいろいろな検査が必要です。
検査の種類や料金は動物病院によって様々です。
身体検査
心拍数、心音、呼吸音、首の血管など身体の状態を見ます。
血圧検査
心筋症を判断するための大切な検査で血圧を測る検査ですが、動物病院という慣れない場所にいることで、通常よりも高血圧になりやすいというデメリットもあります。
超音波検査(エコー)
心臓の状態や血液の流れを見ることが出来る検査です。
血液検査
血液検査の一部に甲状腺ホルモンの濃度を調べる検査があります。
このホルモンの状態によって心筋症かどうかを判断します。
X線検査
心臓の大きさ、肺水腫(肺に水が溜まる病気)や胸腫(胸に水がたまる病気)になっていないか、血管の状態などがわかります。
聴診
聴診器を使って心臓の音や呼吸の音を調べます。
心電図検査
不整脈があるかどうかを調べます。
猫の心筋症の治療
薬による治療
猫の心筋症の治療の多くは薬によるものです。
症状によって、血管を拡張させる薬や血栓を作らない様血液を固まりにくくさせる薬、ホルモンの働きを抑える薬などがあります。
心筋症の薬は飲み始めたら一生涯飲み続けることがほとんどですので、飲み忘れが無いように心がけましょう。
水抜き
心筋症の進行に伴って肺やお腹に溜まってしまった水を抜く処置です。
薬の効果があまりなく緊急を要する際に行う処置です。
酸素吸入
心筋症が進行して肺に水が溜まり呼吸が苦しくなった時に、高い濃度の酸素を吸入して呼吸をサポートする処置です。
まとめ
猫の心筋症については判断が難しく、検査も人間とほとんど変わらないものとなります。
日頃から様子を観察し、身体を撫でてあげながら傷や炎症などがないかを調べてあげてくださいね。
そして、もし愛猫が心筋症と診断されても飼い主は落ち込んではいけません。
猫は飼い主をよく見ていますので、元気がない飼い主を見て何かあったと感じ取ってしまいます。
猫はストレスに弱いので、病状を悪化させないためにも、飼い主はいつもよりも優しく猫に寄り添って安心させてあげましょう。