猫のピルビン酸キナーゼ欠乏症とは、エネルギーを作り出すのに必要なピルビン酸キナーゼ(PK)と呼ばれる酵素が足りなくなり赤血球が破壊されて貧血が起こる病気です。 今回は、猫のピルビン酸キナーゼ欠乏症についてまとめてみました。 |
猫がピルビン酸キナーゼ欠乏症になった時の症状
猫のピルビン酸キナーゼ欠乏症の原因
猫がピルビン酸キナーゼ欠乏症にならないための対策
猫のピルビン酸キナーゼ欠乏症の検査
猫のピルビン酸キナーゼ欠乏症の治療
まとめ
猫のピルビン酸キナーゼ欠乏症について
猫のピルビン酸キナーゼ欠乏症は、「PKLR」という遺伝子の変異を両親から1本ずつ受け取った時に発症する常染色体劣性遺伝です。
ピルビン酸キナーゼ(PK)は、体内のエネルギーの保存に働きかける酵素で、これが足りないとATP(アデノシン三リン酸:動物の細胞内に存在するエネルギー分子)の産生が減少し、赤血球から水とカリウムが逃げてしまうことで赤血球が形を保つことが出来なくなって壊れてしまいます。
赤血球は骨髄や脾臓などで作られますが、壊れる速度が速いために産生が追い付かず貧血状態となり、これを「溶血性貧血」と言います。
猫がピルビン酸キナーゼ欠乏症になった時の症状
先天性の場合、生後2~3ヶ月頃から貧血を発症するケースが多く、長期間にわたって貧血状態が続いた場合は猫がそれに順応してしまうため、目立った症状が見られないこともあります。
後天性の場合、軽度のもの~重度のもの、断続的なもの、生まれて6ヶ月頃から発症するもの~5歳頃に発症するものなど個体によって様々で予測不可能です。
食欲低下
めまいや立ち眩みで気持ちが悪くなり食欲が低下します。
慢性的な貧血
酸素が体中に十分にいきわたらないため運動するのを嫌がり、すぐに息が切れて疲れやすくなり、呼吸や脈が速くなったり口内粘膜の蒼白化が見られます。
黄疸
白目が黄色くなったり、皮膚が黄色く見えたりします。
猫のピルビン酸キナーゼ欠乏症の原因
遺伝
アビシニアン、ソマリは特に変異遺伝子の保有率が高いと言われています。
アビシニアンを血統にもつ品種のほか、血統に持たないノルウェージャンフォレストキャットやメインクーンなども変異遺伝子の保有を確認されていることから、アビシニアン以外にも変異遺伝子を持った品種がいるのではないかと推測されています。
生活環境、ストレス
猫のピルビン酸キナーゼ欠乏症は、発症する年齢や症状が一定していないため、生活環境やストレスが発症に影響を及ぼしているものと考えられており、感染症やストレスによって貧血の状態が悪化することが確認されています。
猫がピルビン酸キナーゼ欠乏症にならないための対策
遺伝によるピルビン酸キナーゼ欠乏症の予防策はありませんが、後天性の場合その原因となる感染症やストレスを予防することが大切です。
混合ワクチンの接種
定期的に混合ワクチンの接種を行うことで原因となる感染症を予防できます。
ストレスを与えない
ストレスはどんな病気の原因にもなりますので、原因を把握しストレスを与えないように心掛けましょう。
繁殖しない
猫のピルビン酸キナーゼ欠乏症は遺伝性疾患であるため、愛猫が変異遺伝子を持っていることが分かった場合は、繁殖しないようにしましょう。
猫のピルビン酸キナーゼ欠乏症の検査
猫のピルビン酸キナーゼ欠乏症は、以下の検査によって原因を調べます。
検査については、動物病院によって様々です。
詳しくはかかりつけの動物病院でご確認をお願いいたします。
血液検査(遺伝子検査)
ピルビン酸キナーゼの働き、網状赤血球の増加、高グロブリン血症、高ビリルビン血症などの状態を検査し貧血の程度や原因を調べます。
画像検査
CT検査、MR検査、超音波検査により、脾腫、肝腫、胆石の状態を確認します。
猫のピルビン酸キナーゼ欠乏症の治療
治療については、動物病院によって様々です。
詳しくはかかりつけの動物病院でご確認をお願いいたします。
軽症の場合
変異遺伝子を1本しか保有していない「キャリア」猫で貧血症状が無症状か軽度の場合は経過観察を行い、激しい運動をしないなど運動を制限することで日常生活を送ることが出来ます。
重症の場合
変異遺伝子を両親から1本ずつ受け継いだ「アフェクテド」猫の場合は運動を制限するほか、赤血球を処理する臓器である脾臓を摘出し、赤血球の減少を抑えることで貧血の状態を改善します。
その他輸血や骨髄移植といった選択肢もありますが、愛猫のストレスやドナー猫の問題、手術のリスク、費用などを考えるとあまり現実的とは言えません。
まとめ
猫のピルビン酸キナーゼ欠乏症は、後天性の原因であることもありますが、たいていは遺伝性疾患が原因です。
貧血の症状が軽度の場合は、激しい運動をしなければ日常生活を送ることが出来ます。
愛猫とストレスのない穏やかな生活を送ることを心がけましょう。