猫が寝ている姿は可愛いですが、人が同じ体勢で寝た場合「身体が痛くなりそうだ」と感じたことはないでしょうか。
この記事では、柔軟性に富んだ猫の身体の基礎である骨格について紹介していきます。
全身の骨格と役割
骨格とは、関節で結合した複数の骨や軟骨によって構成されているものです。
骨格の役割は、頚椎(けいつい)、胸椎(きょうつい)、尾椎(びつい)、前足部、後足部のように身体の組織を支える支柱となることであったり、頭蓋骨(とうがいこつ)や肋骨(ろっこつ)のように重要な臓器を保護することです。
猫は人に比べるととても小さな身体ですが、骨の数は人が約200本に対して40本ほど多い約240本と言われています。
人にとても良く似ている部位もありますが、全く形が違う部位もあります。
大きく7つの部位に分けてそれぞれを見ていきましょう。
猫の頭部
猫の頭部には頭蓋骨(とうがいこつ)があり、前頭骨(ぜんとうこつ)、頭頂骨(とうちょうこつ)、後頭骨(こうとうこつ)、側頭骨(そくとうこつ)など11種類の骨から構成されています。
これらの骨の主な働きは脳を保護することで、生まれたばかりの子猫は母猫の産道を通過しやすい様にこれらの骨の結合が中途半端になっており、頭部を触ると少し柔らかい感じがしますが、成長とともに硬く締まってきます。
顔面部は上顎骨(じょうがくこつ)と下顎骨(かがくこつ)などから構成されており、目や鼻などの感覚器を支えています。
鼻ぺちゃと呼ばれる短頭種であるエキゾチックショートヘアやヒマラヤン、ペルシャは、この顔面部の骨が未成熟のまま成長するように選択繁殖された猫種です。
猫の首部
猫の首部は頚椎(けいつい)と呼ばれる人と同じ7個の骨で構成されています。
第一頚椎を環椎(かんつい)、第二頚椎を軸椎(じくつい)と呼び、この2個の骨の連動で猫の首の旋回運動を可能にしています。
猫の前足部
肩甲骨(けんこうこつ)は、背中側の肋骨の上を動く骨で、前足の筋肉と体幹をつなぐ役割をしています。
歩く時には、肩甲骨が背骨よりも上に上がります。
上腕骨(じょうわんこつ)は、常に腕立て伏せをしているような状態で保持されていて、主に移動する時に使います。
橈骨(とうこつ)と尺骨(しゃっこつ)の2本の骨はねじれ合っていて、この骨をまたぐ発達した回内筋(かいないきん)や回外筋(かいがいきん)を使って手のひらをひっくり返すことが出来るようになっています。
手根骨(しゅこんこつ)は細かい骨がいくつか繋がっており、高い場所から飛び降りるなどの強い衝撃を受けた時に、骨と骨の間にある靭帯を用いて衝撃を分散することが出来るようになっています。
中手骨(ちゅうしゅこつ)は、手根骨の下に位置する骨で前足には5本並んでいます。
趾骨(しこつ)は、移動する時に地面につけて歩く部分です。
この部分はさらに細かく基節骨(きせつこつ)、中節骨(ちゅうせつこつ)、末節骨(まっせつこつ)に分けられ、末節骨の先端には爪が生えています。
この末節骨が回転することによって、爪の出し入れが可能になっています。
猫の後足部
大腿骨(だいたいこつ)は、猫の場合常に膝を折り曲げた形になったまま歩いたり走ったりします。
膝蓋骨(しつがいこつ)は、人と同じように膝の部分にある骨で、下肢の動きを円滑にする役割をしています。
脛骨(けいこつ)と腓骨(ひこつ)は2本で対になっていて、地面からの衝撃をバネのように受け止める役割をしています。
足根骨(そくこんこつ)は、前足の手根骨と同じ様に細かい骨がいくつか繋がっている構造になっており、強い衝撃を分散することが出来ます。
中足骨(ちゅうそくこつ)は足根骨の下にあり、猫種によっては多いものもありますが、一般的には後ろ足の親指は退化して消失しているため前足より1本少ない4本が並んでいます。
中足骨は中手骨よりも長いため、猫は常に後ろ足を折り曲げた状態に保っています。
趾骨は中足骨の末端にあり、前足と同じようになっています。
人に例えると常に指だけで体重を支えている状態のため、四肢のバネがとても発達しており、自分の背丈よりもずっと高い場所へ瞬時にジャンプすることが出来ます。
趾骨の部分だけを地面につけて歩くため、猫の歩き方は「趾行性(指行性:しこうせい)」と呼ばれています。
猫の胸部
胸椎(きょうつい)は、猫の背中の骨で人よりも1対多い13対あります。
イラストでは少なく描かれていますが、肋骨(ろっこつ)も13対あります。
猫の肋骨は、人の様に横に広い形ではなく前後に細長い形をしているため、顔が入るくらいの隙間があれば通り抜けることが出来るようになっています。
胸骨(きょうこつ)は、胸の前にある細長い骨のことで、肋骨の上部9本は胸骨に繋がっています。
猫の腰部
猫の腰椎(ようつい)は、人よりも2つ多く全部で7つあります。
骨が多い分脊椎を柔軟に動かすことが可能なため、高い場所から落下しても身体をねじって着地したり、頭と足が違う方向を向いて寝ていても痛くないようになっています。
腸骨(ちょうこつ)や坐骨(ざこつ)、仙骨(せんこつ)は、寛骨(かんこつ)、恥骨(ちこつ)とともに骨盤を形成しています。
仙骨は、3~4個の骨が1つに融合して出来ていて、腰椎の最下部にあります。
猫の尾部
猫の尾椎(びつい)はしっぽを支える骨ですが、一般的には18~19個の骨から構成されています。
猫種によって数が異なり、マンクスなどのしっぽの短い猫種では4個と少ない数であったり、逆に尾が長い猫種では24個の骨を持つものもあります。
先にいくほど骨は小さくなり、神経の束がある椎孔(ついこう)は第9尾椎あたりまでと言われています。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
猫の身体が柔らかく、一見痛そうな体勢で寝ていても大丈夫なのは、胸椎や腰椎が人よりも多いことと、背骨の間にある椎間板の弾力がとても高く柔軟性があるためです。
また、狭い隙間でも難なく通り抜けられるのは、平たい人の肋骨とは違い猫の肋骨は前後に細長く凸型をしていることと、鎖骨が退化して小さくなっていて胸骨や肩甲骨と直接繋がっていないためです。
普段何気なく見ている猫の動作も、どのような骨格になっているのかを知るとじっと観察してみたくなりますね。