イグ・ノーベル賞とは?
ノーベル賞は「物理学・科学・生理学・医学・文学・平和および経済学で顕著な功績を残した人物に贈られる賞」ということをご存じの方が多いと思いますが、では「イグ・ノーベル賞」とはどのような賞なのでしょうか。主催しているのは「Annals Improbable Reserch」という雑誌とその編集長で、授賞式はハーバード・コンピューター協会、ハーバード・ラドクリフSF協会といった世界のSF研究会が数多く共同スポンサーとなって行っている、ノーベル賞のパロディです。部門はその年によって違いますが、1991年から毎年決められたテーマに沿った10部門の賞を授与しています。誰でも参加することができ、「一般の人々の注目を集めて科学の面白さを再認識させられる」という目的のもと「人々を笑わせ、それから考えさえてくれる業績」や風変わりな研究、社会的事件などを起こした個人やグループに対して贈られる賞です。科学研究以外にも、カラオケやたまごっち、バウリンガルなどの商品に対しても賞が贈られることもあります。「不確実性」をテーマとした2017年のイグ・ノーベル物理学賞を受賞したのは「猫は個体と液体、両方になり得るか」というテーマで人々を笑わせ、その後考えさせたフランスのマーク・アントワン・ファルダンという方でした。
そもそも液体とは?
猫が個体であることは誰もがわかることでしょう。個体とは、「それぞれの生物体を示す」言葉だからです。では、液体とは何でしょう?液体とは、「物質が示す状態の一つ。一定の体積をもつが、流動性があり、どのような形の器にも入るもの」とされています。
イグ・ノーベル賞を受賞した論文では、いろいろな形の容器の中にすっぽりと収まる様々な猫の写真を掲載し、その変形した姿や動きの様子が詳細に記述され猫が液体の定義に適っていることが証明されています。その他にも液体の定義である水の表面の親和性や壁にくっついた液体のような姿、床や階段を液体のように移動する猫の様子が説明されています。
もちろん、加熱によって原子や分子レベルで状態が変化するなど専門的に見てしまうと「液体じゃない」となってしまいますが、「猫は液体かもしれない」と考えた方が何だか楽しくなってきませんか?このファルダン氏が書いた論文の元になったと言われる情報サイトがありますので紹介します。そこに掲載されている写真を見るだけでも思わず微笑んでしまいますよ。
「猫が液体である15の証拠」
猫が液体だと感じる柔軟な身体のしくみ
猫が狭い容器の中に入ったり、一見通り抜けられないと思われるような穴でもするっと通り抜けることを可能としているのは、猫の身体が持つ柔軟性です。
骨の数が多い
猫の骨の数は、私達人間が206個に対して約230個です。猫には短尾だったり多指という種類もいるため骨の数は一定ではありません。特に背骨に関しては、人間が34個しか持っていないのに対し猫には60個もあります。そのため、頭とお尻が全く別の方向を向いていたり、ニャンモナイトと呼ばれるような真ん丸な姿になって寝ていても猫は苦しくありません。また、生まれたばかりの子猫や運動能力が落ちた老猫でない限り、高い場所から落ちても背骨をねじって態勢を整えて足から着地することが出来るのも骨が数が多いことが理由と言われています。
関節が柔らかい
骨と骨の間にある靭帯や椎間板といった関節が柔らかいのも猫の身体の特徴の一つです。猫が身体を伸ばして寝ている姿を見て「長いな」と感じたことはないでしょうか。なんと、猫の関節は可動域が広く伸びた時は普段の2倍の長さになっています。その他にも毛づくろいをする時に、どう見ても身体が引きつってしまいそうなポーズをとることが出来るのも、この柔らかい関節のおかげと言われています。
皮膚が伸びる
品種にもよりますが、猫の皮膚には余裕があります。たいていの猫は被毛で隠れてわかりにくいですが、毛が無い種類として代表的な「スフィンクス」という猫の姿を見ると、猫にはしわがとても多いのがよくわかります。この「ルーズスキン」と呼ばれる余分な皮膚は、身体を自由に動かすのに皮膚が無理に引っ張られないような役割を果たしています。
まとめ
いかがでしたでしょうか。最初のうちは何を言っているんだと思っていた方も「あれ?」となったのではないでしょうか。私自身「猫は液体」という言葉を聞いたことはありましたが、このような人々を楽しませる賞があり、そこで受賞した論文があったことは、この記事を書くにあたって調べるまで知りませんでした。今後も面白いと思った記事などがあれば紹介していきたいと思います。