猫には、人と同じように血液型があります。
猫の血液型を知っておくことでメリットとなることや、血液型によって性格の違いはあるのでしょうか?
この記事では、猫の血液型に関する様々な知識について紹介していきます。
猫の血液型を知っておくことのメリットとデメリット
メリット
輸血が必要な時にすぐ対応できる
猫の血液型を知っておくことで一番のメリットは、病気や事故、出産などで輸血が必要になった時にすぐに対応できることです。
特に事故など緊急性が伴う場合は、血液型を特定するまでの時間を短縮することができ、素早く処置することで亡くなる可能性が低くなります。
他のペットを助けることができる
日本国内において、猫の大規模な血液バンクは現在のところ存在しません。
猫の血液は長期間の保存には向いていないとされており、動物病院で行う輸血は病院で飼っている猫や、動物病院にドナーとして登録している猫から血を分けてもらうことで可能になります。
猫の血液型を調べドナー登録をすることで、他のペットに血液が必要となった時に助けることができます。
新生子溶血の防止
B型の母猫の初乳をA型の仔猫が飲むことで起こる病気です。
初乳には血液と同じように自分以外の抗原に対する抗体が含まれています。
B型の母猫の初乳に含まれる「A抗体」がA型の仔猫の赤血球に含まれる抗原を攻撃して破壊してしまい、溶血性黄疸(ようけつせいおうだん)を引き起こしてしまうのが「新生子溶血」で、生まれたばかりは元気であっても初乳を飲んですぐに死亡することがあります。
これを防ぐためには母猫の初乳を仔猫に飲ませないようにしなければなりませんが、母猫から生まれたばかりの仔猫を引き離すことになり、猫も飼い主もつらい思いをすることになります。
逆にA型の母猫の初乳をB型の仔猫が飲んでも、この症状は起きないと言われています。
デメリット
猫の血液型を知ることでデメリットとなることはありません。
強いて言えば、血液型を調べるためにかかる費用くらいです。
しかし、猫を飼い始めた頃にはウイルス検査やワクチン接種などをする必要があるため、血液型を調べる費用だけ払わないという飼い主さんはいないのではないでしょうか。
猫の血液型の調べ方と種類
猫の血液型を調べる方法
猫の血液型は、動物病院で血液検査をすることで調べることができます。
猫を飼い始めた頃はワクチン接種などで病院に行く機会が多く、病院によって違いはありますが費用は5千~1万円くらいのため、気になる方はその時に調べてみましょう。
血液型簡易判定キット
その場ですぐに診断ができます。
抗A抗体が塗り付けてある「A型」部分、抗B抗体が塗り付けてある「B型」部分それぞれに血液を1滴ずつ垂らして凝集反応(血液がくっついて固まる現象)を確認します。
A型部分のみ凝集した場合はA型、B型部分のみ凝集した場合はB型、両方凝集した場合はAB型になります。
ただし、猫が病気の場合は正確な結果が出ないことがあります。
検査機関で調べてもらう
動物病院で採血した血液を専門の検査機関に送って調べてもらいます。
キットと比較するとより詳しいことがわかりますが、1~2週間ほどかかるようです。
猫の血液型の種類
猫の血液型には、A型、B型、AB型があります。
人の血液型で多いO型は猫にはありません。
猫の血液型は、両親から1本ずつ受け継ぐ「血液型遺伝子の組み合わせによって決定します。
この3種類の遺伝子には優先順位があり「A型遺伝子>AB型遺伝子>B型遺伝子」の順になっています。
A型の猫
両親の血液型遺伝子が以下の場合、仔猫の血液型はA型になります。
- 「A型遺伝子」 × 「A型遺伝子」
- 「A型遺伝子」 × 「B型遺伝子」
- 「A型遺伝子」 × 「AB型遺伝子」
A型遺伝子が優先されるため、猫の血液型はA型が最も多く国内では全体の約90%を占めると言われています。
AB型の猫
両親の血液型遺伝子が以下の場合、仔猫の血液型はAB型になります。
- 「AB型遺伝子」 × 「B型遺伝子」
- 「AB型遺伝子」 × 「AB型遺伝子」
ほとんどの猫の血液型はA型のため、稀にしかない血液型で国内では全体の1%程度の割合です。
猫のAB型は人のように「A型遺伝子」と「B型遺伝子」を受け継いでいるのではなく、「AB型遺伝子」自体が独立して発現すると考えられています。
過去の調査により「A型遺伝子」+「AB型遺伝子」の場合でも「AB型遺伝子」が発現する場合があるという結果が確認されているため、全く別の遺伝子が関わっている可能性も否定できないと言われています。
B型の猫
両親の血液型遺伝子が以下の場合のみ、仔猫の血液型はB型になります。
- 「B型遺伝子」 × 「B型遺伝子」
最も優先順位が低い血液型遺伝子のため個体数は少数で国内では全体の9%程度ですが、猫種によっては個体数の割合が多いものがあります。
輸血する血液の確保
輸血する血液の確保
日本国内において、猫のための大規模な血液バンクはありません。
そのため、現状では血液が必要な場合は次のような方法から血液を確保して輸血を行っています。
供血猫(きょうけつねこ)を飼育する
健康状態の優れた6歳くらいまでの猫を供血猫として飼育して輸血の血液を確保します。
しかし、猫の身体は小さく十分な血液を確保するには複数飼育する必要があるため、大学付属の動物病院や大きな動物病院では対応できますが、小さな動物病院では血液を確保できないため輸血自体行っていないところもあります。
動物病院同士で助け合う
小さな動物病院など、緊急時には相互に助け合っているところもあるようです。
供血猫としてドナーを募る
動物病院に通う飼い主にドナー登録を依頼したり、HPやSNSなどでドナーを募ったりしている動物病院もあります。
しかし、血液を提供するには下記の様な基準があり、提供したくても出来ない場合もあります。
詳細については、提供したい動物病院にご確認をお願いいたします。
- 年齢は1~8歳
- 体重は4kg以上
- 感染症や寄生虫症にかかっていない
- 持病が無い
- 特殊な薬物療法を受けていない
- 毎年ワクチンを接種している(最後の接種が10日以上前)
- 完全室内飼い
- 妊娠していない
- 血液中赤血球の容積が35%以上
- 採血時に大人しくしていられる
動物病院によっては供血猫として血液を提供した場合、健康診断を無料にするなどの特典をつけているようです。
しかし、献血した後は猫が一時的に貧血になるため鎮静剤が必要になったり、潜在的な病気を引き起こす原因となる場合もありますので、よく考えたうえで決断してください。
血液の拒絶反応と交差試験について
猫の血液には赤血球(赤い円盤状の細胞)中に自身の血液型の「抗原」と、血漿(けっしょう:淡黄色の液体)中に他の血液型の抗原に対して異物と認識する「抗体」を持ちます。
詳細は解明されていませんが、同じ血液型同士であっても拒絶反応が起こることがあり、他の抗原が関係していることが判明しているため、輸血の時には血液型のチェックの他に「交差試験」が行われることになっています。
拒絶反応
輸血の時に間違って違う血液型の輸血をしてしまうと副作用が発生しますが、これを拒絶反応と言います。
A型の血液
赤血球中に「A抗原」があり、血漿中に「低度のB抗体」があります。
輸血の時には同じ血液型を輸血するのが基本ですが、B型の血液が必要でももともと全体的に割合が少ないB型の血液が用意できない場合は、副作用が軽度のためB型の猫にA型の血液を輸血することは可能です。
※可能ではありますが、軽度とはいえ副作用があるため基本的にはしません。
B型の血液
赤血球中に「B抗原」があり、血漿中に「高度のA抗体」があります。
A型やAB型の猫に間違ってB型の血液を輸血した場合、強い拒絶反応を起こし「溶血」という赤血球を破壊してしまう重篤な症状を引き起こします。
AB型の血液
赤血球中に「A抗原」と「B抗原」があり、血漿中に抗体はありません。
一見「抗体が無いなら輸血出来るのでは?」と感じますが、輸血する側の猫の血液の抗体がAB型の抗原を異物と認識し攻撃してしまうため、同じ血液型からしか輸血はできません。
緊急時で希少なAB型の血液がどうしても用意できない場合は、A型の血液を輸血することは可能です。
※軽度の副作用を伴う場合があります。
血液の交差試験
猫に輸血をする時には、同じ血液型であることの他に、重大な副作用を起こさないかを確認する交差試験(クロスマッチテスト)が行われます。
これは、双方同じ血液型であっても拒絶反応が起こってしまうことがあり、新たな抗原が関係していることが考えられているためです。
試験は赤血球と血漿を分離し、それぞれ輸血される側の猫の赤血球と輸血する側の猫の血漿、輸血する側の猫の赤血球と輸血される側の猫の血漿を交互に混ぜ合わせて凝集反応を見る試験です。
結果が出るまでは2時間ほどかかり、この試験によって血液が適合することが判明するとドナー猫として認められ、供血することになります。
血液型による性格の違いと猫種による血液型の割合
血液型による性格の違い
人の場合A型は几帳面であるとかB型はマイペースであるなど、何となくですが血液型によってイメージがあります。
猫の場合は、人と違い血液型によって性格の違いはありません。
血液型よりも猫種によるもともと備わっている性格や、何より環境による影響が大きいため、違いがあったとしても僅かしかないと言った方がいいかもしれません。
猫の血液型は国内ではA型が全体の約90%を占めているため、血液型が同じ猫がすべて同じ性格であるとするならば、日本中のほとんどの猫が同じ性格ということになってしまいます。
猫種による血液型の割合
血液型は、猫種によって全体の割合と違うものがあります。
突然変異を持った少数の猫から個体数を増やしたことが主な要因と言われています。
B型が10%未満の猫種
- アメリカンショートヘア(ほぼ100%がA型)
- オシキャット
- オリエンタル
- サイアミーズ(シャム)
- トンキニーズ
- ノルウェージャンフォレストキャット
- ベンガル(AB型の割合が他猫種より多い)
- メインクーン
- ロシアンブルー(ほぼ100%がA型)
B型が10~25%未満
- アビシニアン(AB型の割合が他猫種より多い)
- スコティッシュフォールド(AB型の割合が他猫種より多い)
- スフィンクス(AB型の割合が他猫種より多い)
- ソマリ
- バーマン
- バーミーズ
- ヒマラヤン
- ペルシャ
B型が25%以上
- エキゾチックショートヘア
- コーニッシュレックス(約50%がB型)
- ターキッシュアンゴラ
- ターキッシュバン
- デボンレックス(約50%がB型)
- ブリティッシュショートヘア(約50%がB型)
- ラグドール
まとめ
猫の血液型には「A型」「B型」「AB型」の3種類があり、血液型によって性格は決まっていません。
出産を考えている飼い主さんや、将来愛猫が病気になったり事故に遭ったりした時のために、前もって血液型を確認しておくことは大切です。
輸血については日本国内には大規模な猫血液バンクが無く、血液の確保が難しいため大きな動物病院でなければ十分に対応できないのが現状です。
近年、猫の人工血液合成に成功したという報告がありますが、実用化はまだ先になる見通しのようです。
人工血液が実用化されればドナーとなる猫の負担を減らすことができ、小さな動物病院でも輸血が可能になるため実用化されるのが待ち遠しいですね。