猫を観察していると、前足や後ろ足を見えないように折りたたんでいたり、尻尾を巻き付けたりといった座り方をしているのを見ることがあります。
この記事では、猫のいろいろな座り方やその時に気持ちについて紹介しています。
猫の香箱座り
猫の香箱座りとは
猫の香箱座り(こうばこすわり)とは、まるで置物のようにお腹を下につけて前足や後ろ足を折りたたんで見えない様にし、尻尾を巻き付けた座り方です。
この座り方の名前は、綺麗な形にまとまった姿が茶道や香道の道具として使われる「香箱」に似ていることに由来しています。
海外では、この座り方のことを「catloaf:キャットローフ=猫パン」と呼んでいるようです。
大型の猫種や比較的足の長い洋猫は、前足を折りたたむのが苦手なため香箱座りよりもスフィンクス座りになることが多いようです。
猫以外ではウサギや犬、アルパカも香箱座りをします。
香箱座りをしている時の気持ち
飼い主を信頼している
香箱座りは四肢を身体の下にしまい込んだ座り方なので、何かあった時に咄嗟に動くことができません。
家の中で飼い猫がこの座り方をしていた場合、飼い主がいるところでは危険なことがないと安心している、または危険なことがあっても飼い主が守ってくれると信頼している証です。
香箱座りは、前足は折りたたんでいるためすぐに動かせませんが、後ろ足はすぐ踏み込める形になっています。
リラックスしている
飼い主と信頼関係を築けていない猫や警戒している猫は香箱座りをしません。
この座り方をしている猫はとてもリラックスしている状態で、日が差していて心地よさそうな窓の縁、ソファや床の上などお気に入りの場所で座っていることが多いです。
体調が悪い
香箱座りをしているからといって必ずしもリラックスしているとは限りません。
元気がなく長時間香箱座りをし続けている場合、もしかしたら体調が悪いのかもしれません。
そんな時は、トイレの状態やご飯や水の摂取状況をなどを確認し、気になることがあれば動物病院に連れて行ってあげましょう。
すべての猫が香箱座りをするわけではない
手足を綺麗にしまいこんで「おててないない」と言われる香箱座りは見ていてとてもかわいい座り方ですが、すべての猫が香箱座りをするわけでなありません。
すべての原因ではありませんが、香箱座りをしない原因としては以下のようなことがあります。
・仔猫:仔猫は好奇心旺盛でじっとすることが少なく動き回ることが多いため
・野良猫:自分の身にいつ危険が迫るかわからないため
・大型の猫:前足を折りたたむことが難しく、香箱座りより前足を伸ばして座るスフィンクス座りになることが多いため
・リラックスしていない猫:家に来てから日が浅くてリラックスしていなかったり、よく外に出かける子や警戒心が強い子は気持ちに余裕がないため
・骨格や体型が原因:比較的足の長い洋猫は前足を折りたたむのが大変なため
猫のスフィンクス座り
猫のスフィンクス座りとは
猫のスフィンクス座りとは、お腹を下につけて後ろ足を折りたたんで見えないようにしていますが、前足はまっすぐに伸ばした座り方です。
この座り方の名前は、エジプトのピラミッドの側にあるスフィンクス像と同じ形であることに由来しています。
香箱座りとの違いは前足を折りたたんでいるか伸ばしているかという点です。
飼い猫と違って、野良猫はいつ自分の身に危険が迫るかわからないため、スフィンクス座りをしない傾向があります。
また、飼い猫でも家に来てから日が浅くてリラックスできていない子や、好奇心旺盛で動き回る仔猫は身体が成熟していなく筋力が弱いためスフィンクス座りをしないようです。
大型のネコ科動物であるトラやライオンは、前足を猫のようにしまい込むことができないためスフィンクス座りをしていることが多いです。
スフィンクス座りをしている時の気持ち
飼い主に何かを期待している
前足を出している状態のため、スフィンクス座りは香箱座りより動きやすくなっていますが、後ろ足をたたんでお腹を下につけた状態なので危険が迫っていて素早く逃げるほどの俊敏な動きはできない座り方です。
飼い主に対して「遊んでもらえる」や「おやつが貰える」「ご飯が貰える」などを期待している座り方と言われています。
ややリラックスしている
この座り方をしている猫はややリラックスしている状態で、後ろ足は折りたたんでいますがすぐに踏み込める形をしていて、前足はすぐに動かすことができるようになっています。
心地よさそうな場所やソファや床の上などお気に入りの場所で座っていることが多く、香箱座りをして寝ていた猫が途中で前足を伸ばしてスフィンクス座りになったまま寝ることもあります。
体調が悪い
心地よさそうな場所というより人目につかないような場所で長時間スフィンクス座りのままでいる場合は、リラックスしているのではなく体調が悪い場合があります。
トイレの状態やご飯や水の摂取状況などを確認して、気になることがあれば動物病院に連れて行ってあげましょう。
すべての猫がスフィンクス座りをするわけではない
スフィンクス座りは香箱座りと前足以外は同じ座り方のため、同じようなことが原因でしない猫もいます。
・仔猫:仔猫は好奇心旺盛でじっと座っているより動き回ることが多く、身体が成熟しておらず筋力が弱いため
・野良猫:いつ自分の身に危険が迫るかわからないため
・リラックスしていない:家に来てから日が浅くて飼い主との信頼関係がまだ気づけていない場合や、よく外に出かけたり警戒心が高い子は気持ちに余裕がないため
猫の横座り
猫の横座りとは
猫の横座りとは、前足を下につけたまま後ろ足は横にした体勢で、座るというよりは寝転んでいるような座り方です。
足の形が女性の座り方に似ていることから「女座り」とも呼ばれます。
この状態よりももっとだらけた感じで前足も横にして顔だけ起こしているようなものもあり、猫にとっては非常に楽でありながら周囲を見渡すこともできる姿勢であるため、チーターや野良猫などが休む時は横座りで休みます。
横座りをしている時の気持ち
眠くて無防備な時
ご飯を食べ終わりお腹がいっぱいになって眠くなってくると横座りする猫は多いです。
猫にとっては足や尻尾、胴体の力を抜いた非常に楽な姿勢で、その状態で毛づくろいをしたり、そのまま寝てしまう子もいます。
かなりリラックスしている
この座り方をしている猫は、表情が心地よさそうだったり眠くてぼんやりしていたりします。
前足を下につけて前に出している時は何かあればすぐに動くことができますが、前足も横にしている場合はすぐに動くことができず、とても安心してリラックスしている状態です。
猫が横座りをしないもしくは横座りしかしない原因
横座りは猫にとってはとても楽な姿勢であり周囲を見渡すこともできるため、チーターなどのネコ科の大型動物や野良猫などが休む場合にとる姿勢です。
飼い猫が横座りを全くしない場合は気持ちや体調面に原因があるかもしれませんので、思い当たることがあれば改善するように心掛けましょう。
・リラックスしていない:家の近くで工事などの騒音があったり、頻繁に人の出入りがあるような環境にいる人見知りの猫などは気持ちが落ち着かないため
・体調不良:横座りは楽な姿勢なため、体調が悪かったり怪我をしている場合は他の座り方ができなくて横座りをしていることがあります。いつも他の座り方をしているのに横座りしかしなくなった場合は、猫の表情やトイレの状態、ご飯や水の摂取状況を見て気になることがあれば動物病院に連れて行ってあげましょう。
猫のエジプト座り
猫のエジプト座りとは
猫が前足を揃えてちょこんと座っている姿を見たことがある人は多いでしょう。
この座り方は「エジプト座り」と呼ばれています。
名前の由来は、エジプトの神話に登場するバステト神だと言われています。
紀元前2800年頃の初期のバステト神は、メスのライオンの顔を持つ女性像として描かれていましたが、徐々に猫の姿へと変わっていったようです。
バステト神は子供を守る母のような優しい顔と、敵に見せる悪魔のような顔の二面を持つ猫の女神とされています。
エジプト座りは、猫に限らずウサギや犬も同じような座り方をします。
エジプト座りをしている時の気持ち
何かを警戒している
この座り方は、何かあった時にすぐ行動に移せる姿勢であるため、他の猫や周囲の状況に警戒している座り方と言われています。
野良猫はよくこの座り方をしています。
何かに期待している
家で飼っている猫がこの座り方をする時は、警戒をしているというより何かに期待している時や何かに興味を持っている時と言われており、家の中から外の景色を見ている時にすることが多いようです。
また、来客があった時は警戒してエジプト座りになることがあります。
猫の尻尾巻き座り
猫の尻尾巻き座りとは
猫が前足を揃えて座るエジプト座りをして、尻尾を身体に巻き付けている座り方を「尻尾巻き座り」もしくは「しっぽマフラー」と呼びます。
日本猫(和猫)は尻尾が短い子が比較的多いため、エジプト座りなのか尻尾巻き座りなのか区別がつかない場合もあります。
尻尾巻き座りをしている時の気持ち
何かを警戒している
この座り方は、何かあった時にすぐ行動に移せる姿勢であるため、他の猫や周囲の状況に警戒している座り方と言われています。
尻尾を身体に巻き付けている場合は、弱点であるお腹を隠したり、自分の匂いを周囲にわからないようにするためとも言われていて、エジプト座りよりもさらに警戒心が強い場合に見られます。
警戒心が強くて臆病な性格の野良猫はこの座り方をしています。
不快感を感じていたり不機嫌な時
他の猫と喧嘩をして不快感を感じている時やストレスを感じてイライラしている時、何か怖いことがあった時などに尻尾巻き座りをすることがあります。
この時には、座り方だけではなく表情が睨みつけているようだったり、イカ耳だったりと他の部位にも感情が表れている場合があるため、なるべく原因を取り除いてあげるようにしましょう。
寒かったり床が汚れている時
寒い日に尻尾を巻き付けている場合は、尻尾を巻き付けることで体温が下がるのを防いでいます。
床や地面が汚れていて尻尾を汚したくない場合も尻尾巻き座りをすることがあります。
寒い日は室温を上げたり、床が汚れている場合は拭いたりしてあげましょう。
猫のスコ座り
猫のスコ座りとは
猫がお尻をつけて後ろ足を広げて前に突き出すようにして座る姿が可愛いとネットなどで見かけることがあります。
他の猫種よりスコティッシュフォールドがこの姿勢をとることが多いことから、この座り方のことを「スコ座り」と呼ぶ人が多いようです。
見た目の姿が酔っ払ったおじさんをイメージしやすいことから「おじさん座り」と呼ぶ人もいます。
英語圏ではお釈迦様が座禅を組んでいる姿に似ているため「ブッダポジション」と呼ばれているようです。
スコ座りには、3種類の座り方があります。
・背もたれ型
ソファや壁を背もたれにしてバランスをとって座る座り方です。
・自立型
背もたれも腹筋も使わないで、重力を利用して自立して身体のバランスをとって座る座り方です。
・腹筋型
背もたれを使わずに自分の腹筋を使ってバランスをとって座る座り方です。
スコ座りをしている時の気持ち
リラックスしている
猫にとってお腹は弱点になるため、警戒心の強い猫はお腹を上にするスコ座りはしません。
猫がお腹を見せるのは、その場所が安全で周りにいる人を信頼しリラックスしている場合だけです。
スコティッシュフォールド以外の猫でもスコ座りをすることはありますが、長時間その姿勢でいるのは他の猫種に比べて関節が柔らかいスコティッシュフォールドが多いようです。
毛づくろいをする時
猫は食事や排せつ後はグルーミングをして毛並みを整える習慣があります。
自分のお腹や股間を舐めて綺麗にする時に取る姿勢がスコ座りの姿勢です。
スコティッシュフォールド以外の猫でも毛づくろいの時だけする子もいますし、スコティッシュフォールドでも全くしない子もいます。
病気によって痛みを感じる時
折れ耳のスコティッシュフォールドは、遺伝性疾患が多いと言われています。
その一つに「骨軟骨異形成症」というものがあり、これは遺伝的に骨が十分に成長しない病気で、成長とともに手足の変形が進んだり骨瘤が大きくなったりします。
また、中年~老年の身体の大きい子や肥満の子がなりやすい病気に「変形性関節症」というものがあり、軟骨がすり減ったことによって関節に痛みを感じる病気があります。
このような病気は、四肢に体重がかかる座り方をすると痛みを感じることがあるため、スコ座りはそれを避けた座り方であると考えられています。
まとめ
猫は体調が悪かったり怪我をしている場合、いつもとは違う座り方をすることがあります。
エジプト座りより横座りや香箱座り、スフィンクス座りの方が猫はリラックスしていると言われていますが、場合によっては身体が痛くて伸ばせない、座れないなどの理由があることもあります。
猫の表情やトイレの状態、ご飯や水の摂取状況を見て病気や怪我が疑われる場合は、動物病院に連れて行ってあげてくださいね。